Lesson20-2 シーズン・ティーパーティー

紅茶で楽しむ季節のティー・パーティ

クオリティーシーズンにあわせて、世界中の紅茶を楽しむためのティーパーティという趣向は、紅茶の専門家ならではの愉しみ方の一つです。おもてなしをする際には、相性の良いティーフードを添えましょう。

また、ティーパーティといってもいつも大勢を招く必要はありません。一人でも心から紅茶を楽しめれば、それはパーティーよりも豊かな時間となります。季節を通して紅茶を生活に取り入れる方法もここで修得しましょう。

 

季節にあわせて

クオリティーシーズンを意識することで、四季に最も美味しい紅茶をセレクトすることができます。

ティーパーティ

 

1月 お正月のお客様を紅茶でもてなす

ロージィ・オータムナルとも呼ばれる、秋に摘まれたダージリン・オータムナルに見られる深みのある色合いは、伝統的な漆器や金彩の食器によく似合います。華やかな中にも落ち着いた雰囲気を演出してくれるでしょう。香味は穏やかなので、お節料理や和菓子によく合います。

花びら餅は、新春のおめでたいお菓子です。薄い円形の求肥に、ゴボウの密漬けと白みそ、小豆の汁で染めたひし形の求肥などを挟み、二つ折りにした見た目にも上品なお菓子です。また、伝統的な製法で作られている日本の砂糖菓子和三盆などもよいでしょう。

ストレートの紅茶でいただくのがおすすめです。

jreika/Shutterstock.com

jreika/Shutterstock.com

 

◆2月 寒い朝にはモーニングティー

ケニア茶はCTC製法のティーバッグが豊富なので、忙しい朝にもピッタリです。適度な渋みとコクがあり、優しい香りのするケニア茶は、ストレートでもミルクティーでもおいしくいただけます。寒い朝には、ミルクティーにシナモントーストを添えて、スタート前のリラックスと栄養補給を行いましょう。一日の始まりに元気の出るティータイムです。

また、2月と言えばバレンタインデー。町中においしそうなチョコレートの並ぶ季節。ケニア茶は、チョコレートにもよく合いますので、バレンタインデーに彼をお茶にお招きしても素敵な思い出になるでしょう。

◆3月 ひな祭りのティー・パーティー

ひな祭りは女の子のお祭りですので、ぜひお友だちをお招きしてティー・パーティーでお祝いしましょう。

スリランカのハイグロウンティー、ヌワラエリアは、ほどよい渋みがあり緑茶に似ているので、日本人には親しみやすいお茶です。フレッシュな風味は、洋菓子はもちろんですが、和菓子や和食にもあいます。

ちらし寿司やてまり寿司、桜餅などのティーフードで、和風のアフタヌーンティーはいかがですか。味わうときには、明るい色合いの水色と上品な香味を楽しみたいので、ぜひストレートで。

Cahaya Images/Shutterstock.com

Cahaya Images/Shutterstock.com

 

◆4月 新しい友達をお招きして

4月は、出会いの季節。まだちょっと緊張感が抜け切れていないこの時期は、ぜひ新しいお友だちをお茶にお招きしましょう。

ディンブラのクオリティーシーズンは、1~3月ごろですが、年間を通して品質が維持されているので、やや遅れたこの時期でもおいしくいただけます。セイロン紅茶に特有のマイルドで力強いフレーバーは、紅茶のスタンダード。ストレートもよし、ミルクもよし。お客様を驚かせるような、バリエーションティーでもいいでしょう。またディンブラはどんな食べものにもあうので、サンドイッチやスコーンなど、スタンダードなアフタヌーンティーで、気軽におもてなししましょう。

小さな可愛らしい春のお花をテーブルに飾ると、和やかな雰囲気が出ます。

◆5月 母の日に感謝をこめて

ダージリンのファーストフラッシュは、まだ気温が低い3月中旬から4月中旬にかけて生産されるので、生育が遅く、そのため生産量もあまり多くはありません。グリニッシュといわれる緑色が残る新芽のお茶は、タンニンが少ないのでアミノ酸の甘みがほんのりと感じられる若いお茶です。緑茶に似ているので、日本人の口によく合います。

貴重なお茶ですが、ここはお母さんのために奮発しましょう。ダージリンのファーストフラッシュの若々しい味わいは、さっぱりとさわやかな柑橘系の果物とよく合います。フルーツをふんだんに使ったティーフードを一緒に準備して、家族みんなでお母さんを囲みましょう。

5月の和菓子、鮎菓子などもこのお茶の香味によくあうお菓子の一つです。

◆6月 雨の日はのんびりお家でティータイム

アジサイが美しい雨の季節は、のんびりと紅茶と一緒に過ごしましょう。

ニルギリ高原の紅茶は、季節風の影響で東側の丘陵と、西側の丘陵とでクオリティーシーズンが異なります。そのため、1年を通じて良質な紅茶が生産されます。地理的にスリランカに近いので、セイロン茶の香味にも似ているといわれ、明るい水色にマイルドな渋みは誰にでも親しまれる紅茶の一つです。

時には一人でのんびりと過ごすのもよいものです。フルーツをたっぷりと使ったお菓子と、お気に入りのカップを、自分のためにだけ準備して贅沢なひと時をすごしましょう。

そろそろアイスティーも恋しくなってくる季節。ニルギリはバリエーションティーにも適しているので、オリジナルのレシピを考えながら楽しむのもよいですね。

Marek Bidzinski/Shutterstock.com

Marek Bidzinski/Shutterstock.com

◆7月 カレーと紅茶でホットな夏を

夏バテの心配がでてくる季節ですが、スパイシーな香りは減退気味の食欲をそそります。シンプルな味わいのジャワ茶をアイスで淹れて、お好みのカレーと一緒にいただきましょう。

ジャワ茶はのどごしがよいので、お菓子だけではなくどんなお料理にもよく合うお茶の一つです。さっぱりとストレートでもいいですし、濃い目にいれてミルクティーもおいしくいただけます。明るい水色はアイスティーにするととても美しく、見た目にも涼やかで暑さを忘れさせてくれます。

もちろん、バリエーションティーにも適していますので、誰にでも好まれるお茶です。本格的なカレーをたくさん作り、みんなとワイワイ、木陰でエスニックパーティーをしましょう。

◆8月 涼風とともにハイティーを

残暑の厳しい季節ですが、朝夕には秋の気配も感じられる晩夏の夕暮には、ダージリンのセカンドフラッシュで、優雅な香りを楽しみましょう。味、香り、ともに充実しているといわれるダージリンのセカンドフラッシュは、マスカテルフレーバー(マスカットのような香り)を持ち、「紅茶のシャンパン」と言われます。

コールドミートやスナック、さっぱりとしたデザートなどをたっぷり用意して、ハイティーでどうぞ。さわやかな渋みと香りが、日中の暑さを忘れさせてくれます。

Guzel Gashigullina/Shutterstock.com

Guzel Gashigullina/Shutterstock.com

◆9月 お月見をしながらティー・パーティー

秋の名月には、やはりお団子がよく似合います。夏摘みのアッサムで、お月様をお招きして和風のティー・パーティーも楽しい趣向です。

全インドの50%を占める生産量をほこるアッサムは、世界最大の紅茶の生産地でもあります。熱帯特有の強い太陽との長い日照時間、長く雨が続く環境に育まれたアッサムティーは、タンニンが多く含まれるお茶で、しっかりした香味を持っています。

特に、セカンドフラッシュは飲みごたえのある風味があるので、ミルクティーにお勧めです。カステラや甘納豆など、気軽な和菓子を用意して、日本の秋を楽しみましょう。

 

◆10月 秋の夜長は、紅茶とともに

スリランカのお茶、ウバはハイグロウンティーの一つ。年間を通して、安定的に生産されますが、乾季の最後の8月から9月ごろのものが特に上質とされます。

メンソール系のすーっと鼻に抜けていくような香りが特徴なので、少しこってりしたお菓子や食べ物によく合います。バターやナッツなどをたっぷり使った焼き菓子や、キッシュなどのパイ、栗の風味とたっぷりクリームが人気のモンブランなど、どれもウバと一緒にいただくと、さっぱりとします。

ミルクティーにしてもおいしいですが、その際にはたっぷりのお砂糖をいれて。深い味わいが出ます。

Africa Studio/Shutterstock.com

Africa Studio/Shutterstock.com

◆11月 紅茶の歴史を感じながら

秋の夜は、長く静かな時間が流れます。読書に最適なこの季節は、ちょっとインテリジェンスに紅茶の歴史を紐解きながらお茶をいただきましょう。

ちなみに11月1日は「紅茶の日」。江戸時代にロシアに漂着し、10年の苦難ののちに帰国した大黒屋光太夫が、1791年11月に女帝エカテリーナⅡ世に謁見を許され茶会に招かれました。日本人で初めて紅茶を飲んだということを記念して日本紅茶協会が1983年に定めたものです。

そんな歴史を思いながら飲む紅茶には、やはり中国紅茶がふさわしいでしょう。祁門は、オーソドックス製法でつくられるスモーキーフレーバーが特徴の希少価値が高いお茶です。そんな贅沢な紅茶ですから、ここはちょっぴり欲張って独り占めをしてしまいましょうか。せっかくですから小物などでシノワズリーを演出し、月餅などのナッツやフルーツを使った中華菓子を準備しましょう。

祁門のスモーキーフレーバーを味わいながら、紅茶の歴史を訪ねてください。

◆12月 クリスマスのティー・パーティー

パーティーシーズンの12月。あちこちで、様々なイベントやお招きがある季節です。おもてなしをする側になったら、はりきってティー・パーティーを企画しましょう。食器やテーブルコーディネートにもこだわって、イギリスの貴族のようにちょっぴり豪華なものを使うのもワクワクします。逆にあえて、大人の雰囲気を出してシックにまとめるのも素敵でしょう。

そんな12月にお勧めなのは、贅沢にラプサンスーチョン(正山小種)。松柏で燻煙し乾燥させた独特のスモーキーフレーバーが、ヨーロッパの紅茶通に愛されてきた紅茶です。祁門同様に生産量が少なく、大変貴重なお茶です。ただし、その特殊性から好き嫌いが分かれるお茶でもあります。贅沢にストレートで味わってもよいですが、手持ちの茶葉に少量加えるという方法で味わっても、独特の嗜好性を試みることができます。

スパイスや洋酒のきいたお菓子、チーズやサーモンなどの塩味の強い食べ物ともよく合います。