大戦後の世界の変化
大戦後、世界は大きく変化しました。
植民地の独立
1950年代に入ると、世界中の植民地で独立の機運が高まり、イギリスは次々と植民地を失っていきました。インドやセイロンの茶園も、もはや現地の人々のものとなりました。
イギリスは、地理的にも近い位置にあるケニアの茶園を支援し、投資を強化していく方針をとります。こうしてケニアは、世界でも有数の紅茶生産国に成長していきました。
イギリス国内の変化
女性の社会進出とティーバック
イギリス国内も大きく変化しました。二つの世界大戦により戦場に男たちが駆り出されたことで、女性の社会進出を促されました。戦後は、さらに男性と同じチャンスと権利を求めて活躍する女性が増え、家庭でじっくりと時間をかけてお茶を飲むような人が少なくなっていきます。
そうした社会の変化に対応したのが、あの一度は不評となったティーバッグです。トワイニング社を始め、ブルックボンド社等も次々にティーバッグを生産、徐々に普及していきました。
インスタントティーの開発
さらに、本拠地をイギリスからアメリカに移したリプトン社がインスタントティーを商品化、1960年代後半にはアメリカに急速に広まっていきます。最初は保守的だったイギリスでも、1970年代ごろからインスタントティーが販売されるようになります。
伝統の保護活動
このような紅茶文化の現代化や、アメリカ系のコーヒーショップやファストフード店の出店などにより、消費者の好みも多様化し家族そろってお茶を飲むという習慣が次第に忘れられていきました。
ナショナルトラスト
そうした事態を惜しむ人々の間に、伝統的な価値観を保護し保存していこうとする動きが現れます。特に1895年に設立された歴史的建造物の保護を目的としたボランティア団体「ナショナルトラスト」は、大きな危機感を抱きました。
1970年代に上流階級が、経済的な問題から次々とカントリーハウスを売却すると、ナショナルトラストはそれらを購入し、建物や庭園を当時のまま再現、一般客や観光客に開放するという運動を始めました。さらに、彼らはこうした建物内にティールームを併設し、伝統的なアフタヌーンティーを楽しめるようにも企画しました。
UKティーカウンシル
このような動きの中で、1985年に「UKティーカウンシル」が結成され、イギリスの紅茶の歴史、最新の情報の提供、ティールームの紹介など、紅茶の普及のために活動を始めました。特に、このメンバーに認定されているティールームの中から、その年最高のティールームを選ぶコンテストには定評があり、毎年日本でも話題となっています。
茶の歴史に紡がれた様々な人とドラマ
駆け足でイギリスを中心に「茶」の歴史を学習してきましたが、手のひらにのるほどの小さな茶葉が、世界をめぐり、その時代その時代にさまざまなドラマを紡いできたことを考えると、その深い魅力に驚かされます。
紅茶も含め「茶」には、世界中にさまざまなドラマが残されています。それを追っていくのも、紅茶を味わう愉しみといえるでしょう。ぜひ、たくさんのドラマを探し当ててください。このような知識は教養となり、あなたの紅茶に対する愛情や理解をより深めてくれるでしょう。
Lesson10のまとめ
確認テストで学習した内容を確認し、知識を定着させましょう。
ここからLesson10の確認問題を行うことができます。

