それぞれの階級で花開くさまざまな紅茶文化
繁栄を謳歌する大英帝国では、上流階級だけでなく、多くの人々の生活も非常に豊かなものとなっていきました。
中流階級
まず、中産階級の人々は、1851年に開かれた万国博覧会以降、インテリアに関心を持つようになります。
特に家具や食器、ガーデニングなど美しく装った自宅にゲストを招いて開くアフタヌーンティーは、多くの人々の憧れとなりました。そうした人々へのお茶の淹れ方やマナーの指南書なども出版され、イギリスの紅茶文化はさらに成熟していきます。
簡素な部屋にマッチする茶器の流行
とはいうものの、上流階級の屋敷で使用されるような豪華絢爛なティーセットは、さすがに中産階級の家庭では手が届きませんし、簡素な部屋にはミスマッチです。そこで好まれたのが、デザインを簡素化したり、手描きの部分を転写したりした製品です。特に部屋全体の雰囲気に溶け込むような小さな可愛らしい花柄が好まれました。
家主のセンスを最大限に活かして選び抜かれたティーカップは、ゲストの目につくよう、当時普及しはじめたガラスの扉が付いたチャイナ・キャビネットのなかに並べられ、目でも楽しめるような演出がなされます。
労働者階級
一方労働者階級にも、新しい習慣が見られるようになります。
ハイティーの定着
19世紀後半、北イングランドとスコットランドの労働者階級の間では、「ハイティー」と呼ばれる習慣が定着しました。午後5時から6時ごろ、男性が帰宅するとハイティーが始まります。
ハイティーはアフタヌーンティーとは全く異なるもので、ローストビーフ、スモークハム、ローストチキン、サンドイッチ、スコーン、マフィン、サラダ、チーズ等々かなりカロリーの高いメニューが出されました。
クリームウエアなどの陶器の茶器が
労働者階級の家庭には、ボーン・チャイナのティーセットは高価でしたので、クリームウエアを中心とした陶器のティーカップが人気となり、量産されるようになります。
このようにして、イギリスでは19世紀後半、すべての階級の人たちがお茶を楽しむことができるようになり、それぞれの階級でさまざまな紅茶文化が花開いていくのです。

