茶器を中心に、その発展と歴史を学習してきましたが、Lesson11-9では改めて茶器ブランドや名窯を復習しましょう。紅茶アナリストとして、どれもしっかり知識として身につけておきたい素晴らしいものばかりです。
①ウェジウッド WEDGWOOD (1759)
ウェジウッド窯は、ストーク・オン・トレントに今からおよそ250年前に開窯しました。
創始者ジョサイア・ウェジウッド
創始者ジョサイア・ウェジウッドは「イギリス陶工の父」と呼ばれます。
三代続く陶工の次男として生まれた彼は、11歳の時に天然痘を患い、そのために片足を失うという悲運に見舞われます。陶工の道を絶たれた彼は、陶磁器のプロデュースをするための勉強をはじめます。陶土や釉薬、温度といった化学的な探究をはじめ、経営やマーケティングなどについても研さんを積んだ彼は、努力の人としても有名です。
(スマイルズ著 中村正直『西国立志伝』)
というように、外国の偉人伝として開国間もない日本にも紹介されていました。
創業直後にクリームウエアが人気を博し、時の王妃シャーロットから「クィーンズウエア」の名を許され、1774年にはその名を不動のものとした「ジャスパーウェア」を発表します。
ファイン・ボーン・チャイナが完成したジョサイアⅡ世時代
息子のジョサイアⅡ世の時代には、ファイン・ボーン・チャイナが完成。以降、長い伝統によって培われた優れた技術と、高い芸術性を持つ作品を数多く発表しています。
「コロンビア」「フロレンティーン」「ワイルドストロベリー」「ハンティングシーン」「ストロベリー&バイン」「ピーターラビット」などさまざまなパターンがあります。
②スポード Spode (1770)
ボウ窯でトーマス・フレイが開発したボーン・チャイナの技法を改良し、完成度を高めるための努力を重ねたのが、スポード窯の創始者ジョサイア・スポードです。
その息子のジョサイアⅡ世は、ボーン・チャイナの製品化に成功し、イギリスの陶磁器の歴史を大きく変えることになりました。1806年には王室御用達(ロイヤル・ウォラント)の栄誉を授けられます。
「ブルーイタリアン」「ブルールーム」「デラメール」「ウッドランド」「グレンロッジ」「ゴールデンヴァレー」などのパターンがあります。
③エインズレイ Aynsley(1775)
1775年に開窯した創業者エインズレイは、スタッフオードシャーの炭鉱経営者でしたが、陶器づくりの趣味が高じてついに自らの製陶工場を造ってしまいます。
初めはビアマグなどを製作していましたが、喫茶の習慣の定着とともにティーセットにも着手します。イギリスの伝統的な花の図柄のティーセットが有名ですが、競馬の優勝トロフィーや陶花なども手掛けている窯です。
当時のヴィクトリア女王はもちろんのこと、現女王エリザベスⅡ世、故レディ・ダイアナなど多くの王室女性に愛された陶工です。
④ロイヤルドルトン ROYAL DOULTON(1815)
創始者ジョン・ドルトンが窯を開いた時、彼はわずか22歳でした。ドルトン窯が大きく発展するのは二代目ヘンリーの時代です。
産業革命による公衆衛生とドルトン窯の功績
当時のイギリスは、産業革命によって人口が都市に集中しており、公衆衛生は大きな社会問題の一つでした。特にチフスやコレラといった感染症の予防のためにも、上下水道の整備は差し迫った課題となっていました。これに協力をしたのがドルトン窯です。
もともと便器や浴槽、洗面台などの衛生陶器を扱っていたドルトン窯は、都市整備に大きな貢献をしました。特にドルトン窯の水道管は品質が良く、のちに明治時代の東京にも輸入されることになります。
世界最大の陶磁器メーカーへ
ナイトの称号と王室御用達の勅許
こうして陶器メーカーとしての地位を確立したヘンリーは、ストーク・オン・トレントに窯を移し、ボーン・チャイナに着手します。やがて1887年、窯業関係者としては初めてのナイトの称号を授けられ、さらに1910年にはエドワードⅦ世から王室御用達(ロイヤル・ウォラント)の勅許を得ます。
その後、ミントン、ロイヤルクラウンダービー、ロイヤルアルバートといったイギリスの名窯を次々と傘下におさめて、世界最大の陶磁器メーカーとなりました。
フィギュリン
「バニキンズ」「ハンナ」「フェイブル」などのパターンがあります。また、ロイヤルドルトンでは、器だけではなくフィギュリン(磁器人形)も人気があります。2015年は200年記念の作品も作られていますので、話題となりそうです。
⑤ミントン MINTON(1793)
世界で最も美しいボーン・チャイナ
ヴィクトリア女王をして「世界で最も美しいボーン・チャイナ」と言わしめたミントンは、1793年の創業です。二代目ハーバートの時、1851年大英博覧会をはじめとして、内外の博覧会において高い評価を得ます。
ミントンを代表する「ハドンホール」
贅を凝らした芸術性の高い作品は、現在でも上流階級の人々の人気を集めています。「ダイアデム」「オータムフェスティバル」「エキゾティックバード」などのパターンがありますが、最も人気の高いのが第二次世界大戦後間もないころに発表された「ハドンホール」です。1948年の発表以来、ミントンの代名詞ともなるほどの人気を博しました。
同時期にデザインされ、1993年に発表された「ハドンホールブルー」も高い人気を集めました。
⑥ロイヤルアルバートROYAL ALBERT(1896)
創業は1896年であり、創業の翌年には、ヴィクトリア女王即位60年の記念作品を手掛けるという僥倖を得ます。1904年には、社名に「ロイヤル」を付けることが許され、あっという間に名窯の仲間入りを果たします。
1962年に発表された「オールドカントリーローズ」は、全世界で1億ピース以上を売上げたことにより、現女王エリザベスⅡ世から表彰されました。その他にも「レディーカーライル」「ローズ コンフェッティ」「ポルカ」など、伝統的で優美な花をあしらったデザインは、世界中で今も愛されています。
⑦ロイヤルクラウンダービー ROYAL CROWN DERBY(1748)
「クラウン」と「ロイヤル」の名誉
ダービー窯は、ジョージⅢ世から「クラウン」をヴィクトリア女王からは「ロイヤル」を社名に掲げることを許された窯です。
ボーン・チャイナ以前、イギリスで作られていた陶磁器は、フリット磁器(軟質磁器)と呼ばれるものでした。大陸のヨーロッパ諸国に後れを取っていたイギリスで、最初に作られた窯、チェルシー窯で作っていたのも、このフリット磁器です。チェルシー窯はやがて経営難に陥り、ダービー窯のウィリアム・デューズバリーに転売されます。さらに、ボーン・チャイナの技術を生み出したボウ窯をも傘下に入れ、急成長していきました。
「イマリ」の発表とイギリスの東洋ブーム
創業当初はマイセンの影響を強く受けていましたが、1775年には伊万里の金襴手を写したパターン「イマリ」を発表、イギリスの貴族らの間に東洋ブームが起こります。
このパターンは現在でも製作が続いています。「ハチ」「ミカド」など、ほかにも日本を意識したデザインが多いことも特徴の一つです。
⑧ロイヤルウースター ROYAL WORCESTER(1751)
15人の株式出資者によって設立された、現存する最古の磁器窯
他の窯が熱意あふれる創業者によって興されたことに比べると、ちょっと異色のスタートを切ったのが、ロイヤルウースター窯です。
1751年の創業ですが、15人の株式出資者によって設立されました。現存する磁器窯としては最古の歴史を誇ります。しかも、イギリス初の王室御用達窯として1789年にジョージⅢ世からロイヤル・ウォラントを授けられて以来、途切れることなく授けられ続けている唯一の窯です。
現代的ニーズも積極的に取り入れる
「ペインテッドフルーツ」や「ロイヤルリリー」など、世界の王家のために製作された名品が特に高く評価されています。その一方で、電子レンジにも対応する作品を開発するなど、現代的ニーズを取り入れることにも積極的です。
*現在、スポードはロイヤルウースター社、ウェジウッドはKPS キャピタルパートナーズ社によって設立された新会社WWRD Holdings Limitedの傘下において再建されています。
*ウェジウッドは、ウォーターフォード・
*ミントン、ロイヤルクラウンダービー、ロイヤルアルバートは、現在ドルトンの傘下となっています。
Lesson11のまとめ
確認テストで学習した内容を確認し、知識を定着させましょう。
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