Lesson1-5 紅茶の製造法

紅茶の製造方法には、伝統的な手法を用いるオーソドックス製法と、機械化されて大量生産が可能なアンオーソドックス製法であるCTC製法があります。

 

オーソドックス製法

まず、伝統的な「オーソドックス製法」での作り方とその特徴について見ていきましょう。

① 摘採(Plucking)

茶葉の摘み方は「1芯2葉」または「1芯3葉」です。茶葉1㎏には2,000~3,000枚の茶葉が必要といわれ、茶摘みには熟練の技を要します。女性でも、1日に20~30㎏の茶葉を手で摘む重労働となります。

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② 萎凋(Withering)

「1芯2葉」で摘み取った茶葉は、最初に萎凋(いちょう)という作業に入ります。これは、生の茶葉を萎れさせることによって水分を減少させ、もみやすくする作業です。
自然に日陰で干しておく自然萎凋と、温風をあてて人為的に行う人工萎凋との二つの方法があり、現在では人工萎凋が主流です。この作業で、茶葉の水分を60%程度まで減少させます。

Naumenko Aleksandr/Shutterstock.com

葉を萎れさせて水分を減少させます。 Naumenko Aleksandr/Shutterstock.com

③ 揉捻(Rolling)

次に揉捻機(ローリングマシーン)という機械にかけ、もみ砕きます。この作業を揉捻といいます。葉の細組織が破壊されることで茶葉から汁が出て、これが空気に触れることによって発酵が促進されます。
この工程で使用する機械の種類によって、リーフタイプブロークンタイプの紅茶ができます。

④ 発酵(Fermentation/Oxdisation)

生茶葉の発酵は、すでに萎凋の段階から少しずつ始まっていますが、揉捻機にかけられると一気に発酵が促進されます。もみ砕いた葉を室温25℃、湿度90%に設定された部屋に運び、適当な厚さに広げて約2時間程度かけて発酵させます。
茶葉の色は、次第に緑色がなくなり、黄味を帯びてやがて赤く変色し、最終的には褐色となります。紅茶の美しい色合いと独特の芳香は、この工程で生み出されます。

⑤ 乾燥(Drying)

十分に発酵させた後は乾燥工程に進みます。100℃前後の熱風をあて茶葉の水分が3~4%になるまで乾燥させ、発酵を止めます。こうする事で葉は褐色となり硬く縮み、紅茶は完成します。
こうしてできた紅茶は荒茶といいます。この工程は最も大切な工程で、経験を積んだ責任者が萎凋からの状態を総合的に判断して、温度や時間を調整します。

⑥ クリーニング(Cleaning)

荒茶に混入した繊維、木茎、かたい葉脈、粉じんなどを取り除くために篩(ふるい)にかけられます。機械だけではなく、手作業で行う場合もあります。

⑦ 等級区分(Grading)

荒茶は大きさが不揃いなため、篩にかけて不純物を取り除きながら、グレード(茶葉の大きさ)ごとに区分します。この工程を終えた紅茶を仕上げ茶といいます。

⑧ 袋詰め(Packing)

グレードに分けられた紅茶は、それぞれサイズごとに貯蔵庫で一時保管されます。茶園名、等級、重量、ロット数、ロット番号などが袋には記載されます。

 

 CTC製法(アンオーソドックス製法)

CTCとは、「Crush(つぶす)」「Tear(引き裂く)」「Curl(粒状に丸める)」の略です。CTC製法は、まさに機械でこの名のとおりに作っていく方法です。

①“C” :Crush

茶葉が細かくつぶされていきます。

②“T” :Tear

かなり細かく砕かれて、ドロドロになります。

wang song/Shutterstock.com

wang song/Shutterstock.com

③“C”* Curl

茶葉に茶汁が付着します。

④発酵

発酵させていきます。少し黄味がかかってくるようになります。

⑤乾燥

大きな機械で乾燥させます。

NarisaFotoSS/Shutterstock.com

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⑥選別

茶葉を選別します。

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「萎凋」させた葉を2本の速度の違うローラーに巻き込ませて葉をつぶし、茶葉を切断していきます。ローラーの表面には細かい歯が刻まれており、これによって細胞組織を破壊して茶汁を絞りだし、茶汁を付着させながら粒状に丸めます。

成形後はオーソドックス製法と同じで、発酵→乾燥→クリーニング→等級区分→袋詰めと進んでいきます。できあがる茶葉の形状はオーソドックス製法とはまったく異なり、茶葉の原形を留めてはいません

もともと大量生産を目的として考え出された製法で、出来上がった茶葉にお湯を注いだ時に、より早く紅茶の成分が抽出されることが第一とされています。この製法では、茶汁が茶の繊維にからみついた状態で乾燥が行われているので、茶液を短時間で抽出できることが最大のメリットです。安価でティーバッグなどに用いられますが、近年ではCTC製法の茶葉でも量り売りがなされるようになっています。

ケニアの紅茶はほぼ100%、インドでも約90%がこの製法で占められており、世界の紅茶の半分以上はこのCTC製法で生産されています。