一日中とにかく紅茶を飲んでいるイギリス人ですが、それぞれの時間帯により、その名前も出される軽食も若干異なります。ティーフードの由来や意味など、ここでも学習しておきましょう。
①アフタヌーンティー afternoon tea
◆スコーンscone
スコーンの基本
地域によって若干作り方に違いがありますが、基本的には、小麦粉、ベーキングパウダー、ミルク、バター、卵で生地を作ってオーブンで焼くがのスタンダードなスコーンです。サイズも一定ではなく、ゴルフボールくらいの小さなものもあれば、日本の今川焼ほどの大きさのものまでさまざまです。また家庭により干しぶどうやチーズ、紅茶の茶葉やチョコチップを入れるアレンジも現代ではよくなされています。
食べ方
手で水平に2つ割って食べます。最初にバターを塗り、ジャムを重ね、最後にクリームをたっぷりつけていただきます。ジャムとクリームの順番が逆の場合もあります。
クリームは、こってりとした脂肪分の高いクロッテッド・クリーム(clotted cream)が好まれますが、ホイップクリームが使われることもあります。ジャムは、イチゴのジャムだけではなく、キイチゴやスモモなどのジャムやママレードのこともあります。
ドロップ・スコーン
ドロップ・スコーンとは?
オーブンではなく鉄板で焼くスコーンで、「ドロップ・スコーンdrop scone」または「スコティッシュ・ドロップ・スコーンScottish drop scone」と呼ばれます。
名前の由来は鉄板の上にスプーン一杯分の生地を垂らして小さな丸い形に焼き上げることから。普通のスコーンのように、ナイフで切ることはなく、そのままバターやジャムなどを塗っていただきます。
スコーンの名前の由来
スコーンの名前の由来はスクーン城の「運命の石」にあやかったといわれています。
イギリススコットランドにあるスクーン城には、代々の王がその上で戴冠式を行ったという「運命の石(Stone of Destiny, Stone of Scone)」がありました。玉座の礎石になっていた石で、この石には「石碑のある場所はかならずアイルランド人の子孫が統治するであろう」という預言があり、スコットランドをアイルランドの王の子孫が統治する際に、この城に据えられたもの石です。
ところが1296年、スコットランドに勝利したイングランド王、エドワードⅠ世に運命の石持ち去られてしまいます。この石を巡っては、スコットランドとイングランドとの間に紆余曲折があり、さまざまなミステリーもささやかれましたが、1996年にスコットランドに返還され、現在はエディンバラ城に保管されています。
この「運命の石」や王の玉座を連想させる形のスコーンは、石を思わせる形に焼き上げられることが多く、その神聖さを重んじ食べる時にはナイフは使わず、縦に割らずに手で横半分に割って食べるのがマナーだとされています。型抜きをしない大きなタイプのスコーンはナイフで食べやすい大きさに切って食べることもあります。
◆ティー・ブレッドtea bread
ケーキのようにも見えますが、長方形の小さな焼き菓子でブレッドと呼ばれます。干しぶどうやアーモンド、無花果を入れて焼いたパン手作りのもので、薄く切ってバターやクリームチーズをつけて食べるのが一般的です。
イギリスでは、このようにドライフルーツが入ったケーキは「ティーブレッド」、ドライフルーツがはいったパンは「ティーケーキ」と呼ばれています。ティーブレッドによく似たものに「フルーツケーキ」がありますが、見た目は大変良く似ており、強いて違いをあげるとすればティーブレッドのほうがしっとりしており、日持ちする点でしょう。
◆ティー・ケーキtea cake
「茶菓子」という意味ではなく、小麦粉、ミルク、バター、砂糖を基本にしてイーストを入れて焼き上げた、小さな丸い形をした甘みのあるケーキです。見た目は干しぶどうパンのようですが、イギリスでは「ケーキ」と呼ばれます。
トーストしてから水平にナイフで切り分けて、バターを塗って食べます。特に冬のアフタヌーンティーで好まれるティーフードです。最近では、さまざまなバリエーションもあります。
*イギリスで「ティーケーキ」というと、実は3種類ほどイメージされます。このレーズンパンのようなティーケーキの他に、上記のティーブレッドに似たクグロフ型のドライフルーツケーキ、また直径5cmくらいのドーム状のお菓子も「tea cakas」です。少しややこしいですが、どれも紅茶にぴったりの美味しいものであることに代わりはありません。
◆お茶うけ用サンドイッチtea sandwich
本格的なアフタヌーンティーでは、ケーキなどを食べる前に、まずサンドイッチに手を付けるのがマナーとなっています。
憧れのキュウリのサンドイッチ
スモーク・サーモンやチーズ、ハム、ツナ、ターキー、トマト、レタス、クレソン等々いろいろなサンドイッチがありますが、中でも最もポピュラーなものは、キュウリのサンドイッチcucumber sandwichです。スタンダードなものは、透けて見えるくらい薄くスライスしたキュウリに、塩と酢を振りかけておき、薄く切った食パンにキュウリを2層に並べ、その上にもう1枚パンを重ねたものです。パンの耳は切り落とし、全体を3等分にします。指でつまめるくらいの小さな三角形や長方形に切って出されることもあります。
19世紀、夏野菜のキュウリはとても高価で贅沢なものでした。それを食べることができるのは、温室を持っている富裕層に限られていましたから、憧れのサンドイッチだったのです。



